まだ誰も知らない恋を始めよう

「……俺の恋人になってくれるのなら」


 これはあくまでも嘘だと分かっているけど、俺は。
 俺は自分を取り戻せたら、これを本当にしたい。
 

「ずっと、こっちに嵌めてて欲しい。
 それと、もう1つお願いがある。
 フィニアスじゃなくて、恋人なんだからフィンと呼んでくれないと」

「う、うん、了解しました、フィン……」


 俺のあの『御礼のお金』でのヤラカシから、彼女は俺をフィンと呼んでくれなくなった。
 それは、もう友達じゃない、と引かれたのだとずっと感じていて。

 この機会に呼び名を戻して欲しいとお願いするのは、図々し過ぎるか?


 だけど、絶対に俺は……いつか嘘を本当にさせてみせるよ。


   ◇◇◇


 俺の家は、ホテルペンデルトンの敷地内にある。
 便宜上ホテルは本館、自宅は別館と呼ばれている。

 ホテル自慢の庭園から小型移動車で小さな森を抜けて、の先にあるのだが、昔はよくホテルの別棟に間違えられて、散歩中のお客様が訪れた。



 それで、曽祖父の時代に森の中程にある湖畔の東屋から『ここから先は私有地につき立入禁止』の立て札を立てたのだが、それでも好奇心にかられた侵入者は居る。

 今では、家の周りを頑丈な壁と門扉でぐるりと囲い、警備員も正門横に常駐させている。