まだ誰も知らない恋を始めよう

 しばらく誰もが黙っていた。
 おしゃべりなオルくんでさえも。

 期待されていた類いまれな魔力を持った魔法士がどうして外れになってしまったのか、わたしが考えても仕方がないのに。
 目の前のオルくんを見ていたら、祈らずにはいられなかった。

 この学院全体が必死で、彼をこちら側に引き留めようとしているのは、ヨエル・フラウの二の舞にはしたくないからだ。
 そしてきっと、それにはジェリーの存在が不可欠で……


 

 授業終了を知らせる鐘が鳴って昼休みになり、軽く手を上げてオルくんが先に応接室から出ていき、フィニアスとわたしは魔法の国を去ることにした。


 廊下を3人で無言で歩いていると、一足先に教室に帰ったのだと思っていたオルくんがいつの間にか戻ってきていて、ベッキーさんと共に正門まで見送ってくれた。


「今日はお時間を取っていただきまして、ありがとうございました」

「こちらも出来るだけ早く動けるように、各所で調整しますので、お気を落とさずにお待ちください」