まだ誰も知らない恋を始めよう

 さっきまで、ベッキーさんはマッカーシーの長年の隠蔽を『王家と魔法庁を謀っていた』と糾弾してなかった?
 確かに彼女からは、わたしに向けての悪意は感じなかったけれど、それでも魔法庁側の人で……じゃなかった?


「あの……わたしが能力者だと……父や兄に比べたら微々たるものですが、能力を隠していた事、魔法庁には……」

「あ? あぁ、報告しませんよ。
 チャールズ卿とは、それなりに付き合いは長いのに、貴女のことを隠されていたのでね、すみません、意地の悪い真似をさせて貰いました。
 わたしの両親も、わたしに魔力があることは10歳過ぎても周囲に隠していましたから。
 娘には人並みの幸せを願う親心は分かってるつもりです」

「人並みの幸せ……」

「よく言われますよね、人並みのとか、女としての幸せだとか。
 結婚、出産と皆が言う」


 ベッキーさんが口元を歪めて、最後は吐き捨てるように言った。
 名字が同じオルシアナスは、彼女の養子で。
 一般的に言われる女としての幸せを、人よりも美しい彼女は、自ら放棄したのだろうか。


「男性はね、魔力や能力があっても問題ないんですよ。
 むしろ、同性異性問わず憧れられます。
 けれど女性は……そんな力を持つ女は怖いなんて言われて、一般の男性から避けられるんです。
 じゃあ、同じ魔力を持つ魔法士はどうかと言えば。
 お互いの血を掛け合わせたら、どんな子が出来るだろう、なんてプロポーズの言葉さえ実験のように言われる」