まだ誰も知らない恋を始めよう

「ダニエルさんには、彼が見えて、彼と言葉を交わせて、その上触れることが出来る。
 それはマッカーシーの力で?
 その能力は男児のみに継承され、女児は無能と何代も前から国には届け出られてますよね。
 マッカーシーは百年以上もの間、王家と魔法庁を謀っていた……と言うことですか?」


 微笑みを消した彼女の声から。
 ここまで、わたしに見せていた親しみの色が消えた気がした。


「魔法学院に行くのはいいが……気を抜くなよ。
 赤毛にエルの能力を気付かれたら、面倒だ」


 昨夜、帰り際に兄から注意されたことを思い出した。
 あぁ、そうだ……フィニアスに兄が言ったんだ……
 父が帰国してから、家族で話し合う、って。
 それまでは、本当は魔法庁に接触させたくないって……


 ベッキーさんの綺麗で親しげな笑顔に。
 フィニアスの存在に気が付いてくれた事に。
 つい気を許して、またわたしは馬鹿な真似を晒した!
 

 魔法学院は魔法庁で働く人材を育成する学校で、入庁を断り続けているとは言っても、彼女は魔法庁から給料を貰っている人だった……向こう側の人だった!

 
 マッカーシーのご先祖様が、女児は無能として魔法庁の特務に就かせなかったのは、ちゃんと理由があったはず。

 父が仕事に対して、それなりの誇りと矜持を持つ姿を見て育ち、わたしも、と憧れた。
 でもそんな甘っちょろい憧れなんかで、特務の仕事は無理だから、父も兄も……そしてご先祖達も、マッカーシーの女は無能と届けていたのだろうに……

 それが、またわたしの愚かな行為で。
 今度は家門が王家を騙し続けていたことが明るみになった……その事実に愕然とした。