まだ誰も知らない恋を始めよう

 好きな人が居るか、について否定も肯定もせずに上手く誤魔化せたと自分では思っていたんだけど。
 フィニアスは凄くいい笑顔になって。


「よかった! じゃあ、これ!
 もし、ロジャーの奴が君に失礼な態度を見せたら、この指輪を見せて」

 そう言いながら、彼はわたしの右手を取って、薬指にそれをはめた。
 右手……そうだよね、右手。
 わたしは何を期待したんだろう。


「……この指輪は、フィニアスの友達だと認めて貰える保険なんだ?」

「……うん」


 一言だけの彼の返事を聞きながら、空に自分の右手をかざして指輪を眺める。
 薄い黄色に薄い緑色が混じるような、複雑な色をした宝石が付いている。
 パッと目を引く大きさの石ではないけれど、どこか懐かしいようなその優しい色合いと輝きから目が離せない。


「……それさ、母の指輪で。
 一族の者なら、皆知ってるから」

 えーっ、それって……わたしは血の気が引いた。
 石は小さくても、絶対に物凄いお値段の……指輪じゃないの?
 それを? お母様の指輪を、勝手に持ち出してきたの!?


 彼はとうとう無銭飲食と無賃乗車の常習犯から空き巣に、レベルアップした。