まだ誰も知らない恋を始めよう

「お前達2人は、フィニアスなら幼少期から後継者の教育は受けていて、その責任とか心構えも叩き込まれているだろ?
 エルの場合は、能力を認めて欲しい、だったよな?
 だから仕事より私生活を優先したいってのが、理解出来ないと思う。
 だが省内にもそういう奴は年々増えてきてて、今でもそこそこ稼げるから役職なんか要らない、とはっきり面談で口にするから、上も嘆いてる」

「面談でそれを言うの!?」

「心身の健康のためには、あくせく働くよりも、私生活の充実が大事なんだと」

 驚くわたしに、兄が頷く。


「ペンデルトンは他にも旅行会社や劇場も経営していて、ホテルはグループの母体だ。
 つまり、フィニアスはホテルの後継ってだけじゃなく、その肩には一族郎党、系列会社全従業員とその家族の生活が掛かってる。
 そんなの勘弁してくれ、と俺から見たアボットなら思ってそうだし。
 恋人を使って家出の噂を気長に大学構内で広める位なら、ゴシップ専門の新聞に御曹司の乱れた行状を捏造してリークした方が早い」

「じゃ、兄さんから見たロジャーは、そんな野心を持ってない?」

「そうだな、現状のままで総務の上まで行けたら御の字、と思ってるんじゃないかな。 
 現にあいつはディナーの時は、開始前には挨拶に来るけど、帰りの見送りはしないから。
 外務省の担当なんて良いポジション貰ってるくせに、退社時間にきっちり帰って残業なんかしない」