朝に聞くには、かなりパワフルな声が耳に響く。
「なに…」
画面を確認しなくてもわかる、聞きなれた声。
「なに、あんた、今起きたの!?」
「まあ、だらしない!」と今にも小言が始まりそうな言葉が続く。
ただでさえ痛い頭に、キンキンした声が余計に響く。
「…用無いなら切るぞ。」
手探りで眼鏡を探す。
やっとクリアになった視界に見えるのは、”母”と映し出されるスマホの画面。
なんでよりにもよって、今日なんだ。
十分休んだ日でも、母親のパワフルさにはかなわないと常々思うのに…
「あ、ちょっと待ってよ。」
早々に電話を切ろうとする息子を制する。
「なに…」
自分でもわかるくらいに声のトーンがいつもの3割増しで落ちている。
そんな俺にもお構いなしに母さんは続ける。
「受かったのよ!沙那《さな》の大学!」
「え…!おお…!おめでとう」
「なによ、もうちょっと喜べないの。」
今の俺にできる最大限の喜びを表現したつもりだったけど、どうやらそうは聞こえなかったようだ。
「喜んでるよ…」
そう言うけれど、全然そうは聞こえないのが自分でもわかる。

