…最悪の目覚めだ。

絶対に昨日の飲みが原因だと思う。

なんだか頭も痛いし、おまけに最悪な夢を見た。

半分起こしかけた体を、再びベッドに沈める。

目を閉じて、さっきの情景を思い出す。

何度思い出そうとしても、もうぼんやりとしか思い出せない。

夢の続きに戻れないことを少しがっかりする自分と、続きを見なくていいと安心する自分が混在する。

「…本当に最悪だ。」

もうすっかり忘れていたのに。

なんで今更夢になんか出てくるのだろう。

”安芸”

その存在が今も俺の中にいるというのだろうか。

ずっと思い出すこともなかったというのに。

目を閉じると、彼女の存在がまだすぐそこにあるようなそんな気がする。

モヤモヤした心の中に、少しだけ温かさを感じるのは気のせいだろうか。

…気のせいであってほしい。

ため息が漏れる。

「だから、過去を振り返るのなんて嫌なんだ…」

力なく吐き出した嘆きは、宙に溶けていく。