「なあ、安芸《あき》ってなんで彼氏作らねえの?」

ノートに何かを書き留める手を止めるでもなく、興味なさそうな様子で机にかじりついている。

懐かしい光景が視界に広がる。

今にも懐かしい木のにおいがしてきそうな机や椅子がきれいに並んでいる。

開いた扉から、なんだか懐かしさを感じる元気な声がかすかに聞こえる。

懐かしいなこの感じ。

あの頃はこれが日常だった気がするのに、今ではすっかり懐かしさを感じる。

黒板の緑色にすら感動を感じられるレベルだ。

窓の外は真っ青な空がどこまでも広がっていて、少し開いた窓から入る風にカーテンがそよいでいる。

耳から零れ落ちたキレイな真っ黒な長い髪が、風に揺れる。

相変わらず、俺のほうは見向きもしない。

「その言葉、そっくりそのまま返すけど。」

やっと口を開いたかと思えば、そっけない返答…

「いや、俺、彼氏いらねえよ。」

「わかってる。」

何を書いているのか、忙しなくペンを動かして何かを書き記している。

窓いっぱいに入る光のせいで、白い肌が余計に透き通って白く輝いて見える。