「なあ、もし過去に戻れるなら、いつに戻りたい~?」
いつもより少し間延びした声で、突然そんな質問を投げかけてくる。
「何だよ、その話題…お前、酔ってるだろ?」
隣で楽しそうに顔を赤らめている同僚を一瞥する。
「酔ってね~よ~」
なんて言いながら、またグラスを口に運ぶ。
同僚は楽しそうに、それでいて少し嬉しそうに過去の思い出話を話し始める。
これは、そろそろ止めるべきタイミングなのかもしれない…
気持ちよさそうに飲んでいる同僚の話を聞きながら、俺もグラスを口に運ぶ。
「で!!お前はいつに戻りたいよ!?」
俺の肩に手をかけながら、妙に力の入った口調で同僚が言う。
酔っ払い特有の情熱的な絡み方になってきたな。
「…別に」
「あぁ!?なぁんだぁ、お前。やり直したい過去はねえってかぁ!?」
同僚は頭を抱えるような素振りを大げさにしながら、「これだから、お前はよぉ」と相変わらずの音量で言う。
「…どういう意味だよ」
嘆く同僚に尋ねる。
最後の一口を流し込む。
「お前にやり直したい過去なんてねぇよなぁ!ああ、わかってる。そんなのわかってんだよ!!」
同僚はそう吐き捨てて、机の上に突っ伏した。

