修学旅行の余韻にゆっくり浸る間もなく、テストや文化祭準備に追われ、あっという間に文化祭当日がやってきた。
愛梨のクラスは大正時代をモチーフとしたレトロカフェを開くことになった。
メニューはドリンクやパンケーキなどの一般的なものだが、大正時代の男子学生の制服っぽい衣装を推す一部の女子の熱意に圧倒され、あっさりと決まっていった。
愛梨は日菜子や麻帆と一緒に裏方の調理係となり、隼人も裏方を希望したが、衣装を推してきた女子の猛反対により、新田と一緒に渋々接客係をすることになった。
「ちょっと、うちのクラスの男子の衣装ヤバすぎるって。絶対行列できるよ」
別室で接客係と衣装の最終調整をし終えた女子生徒が、興奮しながら教室に戻ってきた。
愛梨もまだ隼人の衣装姿は見ていない。
廊下の向こうの方がザワザワするのが分かり、白と黒の集団が教室に入ってきた。
接客係の女子はメイド服風の白いエプロンに黒いワンピース、頭には白いフリルカチューシャを付けている。
スカートの長い丈と足元の黒いローファーがレトロカフェの上品な雰囲気を醸し出していた。
男子は、別の高校の友達や兄弟から借りた黒い学ランの上下に、前に四つずつ二列にボタンが付いた黒いコートを羽織り、いわゆる昔からある学生帽を被っている。
衣装係がこだわったのがコートで、腰より下の少し長めの丈でマントのようになっている。
コートを羽織り、前側だけ鍔の付いた学生帽を目深に被ることにより、大正時代のクールで男らしい雰囲気を出したかったようだ。
その中で背が高い隼人はやはり目立っていた。
「あーあ、また藤島くんファンが増えるね」
麻帆が愛梨の耳元で囁く。
日菜子は既に新田を取り囲む集団の中に陣取り、写真を撮っている。
隼人の周りも撮影会状態になっていた。
目が合ったので、言葉は発さず口を「に・あ・う」とだけ動かしてほほ笑むと、隼人は照れながら笑った。
やはり衣装効果のおかげか次々と注文が入り、調理係も大忙しだった。
お客さんとの撮影はチェキ写真のみ許可されているので、隼人はカフェの接客をするよりも写真撮影場所からなかなか離れられなかった。
隼人は撮影時には更に帽子を深く被って顔がなるべく見えないようにしているのが分かった。
その様子を見て愛梨はホッとした。
レトロカフェは午後二時を過ぎた時点でメニューが完売となった。
接客係も裏方のみんなも満足そうな顔をしている。
「大成功だね」
最初にレトロカフェを提案した女子はみんなから次々と感謝や誉め言葉をもらい、涙ぐんでいた。
全員で集合写真を撮った後、衣装係の女子二人が愛梨を挟むように近づき、「こっちに来て」と手を引かれた。
何が何だか分からず、厨房として囲われている教室の隅に連れて行かれる。
「愛梨ちゃんの文化祭はまだまだ終わってないよ」
そこには制服に着替えた接客係の女子も居て、その子が脱いだメイド風衣装が置かれていた。
「これに着替えて藤島くんと他のお店回ってきたら?」
女子三人は満面の笑みで衣装を愛梨に手渡した。
愛梨のクラスは大正時代をモチーフとしたレトロカフェを開くことになった。
メニューはドリンクやパンケーキなどの一般的なものだが、大正時代の男子学生の制服っぽい衣装を推す一部の女子の熱意に圧倒され、あっさりと決まっていった。
愛梨は日菜子や麻帆と一緒に裏方の調理係となり、隼人も裏方を希望したが、衣装を推してきた女子の猛反対により、新田と一緒に渋々接客係をすることになった。
「ちょっと、うちのクラスの男子の衣装ヤバすぎるって。絶対行列できるよ」
別室で接客係と衣装の最終調整をし終えた女子生徒が、興奮しながら教室に戻ってきた。
愛梨もまだ隼人の衣装姿は見ていない。
廊下の向こうの方がザワザワするのが分かり、白と黒の集団が教室に入ってきた。
接客係の女子はメイド服風の白いエプロンに黒いワンピース、頭には白いフリルカチューシャを付けている。
スカートの長い丈と足元の黒いローファーがレトロカフェの上品な雰囲気を醸し出していた。
男子は、別の高校の友達や兄弟から借りた黒い学ランの上下に、前に四つずつ二列にボタンが付いた黒いコートを羽織り、いわゆる昔からある学生帽を被っている。
衣装係がこだわったのがコートで、腰より下の少し長めの丈でマントのようになっている。
コートを羽織り、前側だけ鍔の付いた学生帽を目深に被ることにより、大正時代のクールで男らしい雰囲気を出したかったようだ。
その中で背が高い隼人はやはり目立っていた。
「あーあ、また藤島くんファンが増えるね」
麻帆が愛梨の耳元で囁く。
日菜子は既に新田を取り囲む集団の中に陣取り、写真を撮っている。
隼人の周りも撮影会状態になっていた。
目が合ったので、言葉は発さず口を「に・あ・う」とだけ動かしてほほ笑むと、隼人は照れながら笑った。
やはり衣装効果のおかげか次々と注文が入り、調理係も大忙しだった。
お客さんとの撮影はチェキ写真のみ許可されているので、隼人はカフェの接客をするよりも写真撮影場所からなかなか離れられなかった。
隼人は撮影時には更に帽子を深く被って顔がなるべく見えないようにしているのが分かった。
その様子を見て愛梨はホッとした。
レトロカフェは午後二時を過ぎた時点でメニューが完売となった。
接客係も裏方のみんなも満足そうな顔をしている。
「大成功だね」
最初にレトロカフェを提案した女子はみんなから次々と感謝や誉め言葉をもらい、涙ぐんでいた。
全員で集合写真を撮った後、衣装係の女子二人が愛梨を挟むように近づき、「こっちに来て」と手を引かれた。
何が何だか分からず、厨房として囲われている教室の隅に連れて行かれる。
「愛梨ちゃんの文化祭はまだまだ終わってないよ」
そこには制服に着替えた接客係の女子も居て、その子が脱いだメイド風衣装が置かれていた。
「これに着替えて藤島くんと他のお店回ってきたら?」
女子三人は満面の笑みで衣装を愛梨に手渡した。
