「鈴音先輩、あの、怒っちゃいました……?」
私より全然大きいくせにこちらを上目遣いで見つめてくる彼の頭に、垂れた犬耳が見えた気がした。
元・最強の総長とは思えないそのしょげ方に、もういっそ笑いがこみ上げてきてしまって。
「怒ってないよ」
「本当ですか!」
今度は垂れていた耳がピンっと立つのが見えた。
「うん。……そうだ。言えてなかったけど、今日は助けにきてくれて本当にありがとう。斗真くん」
笑顔でお礼を言うと、彼の顔がみるみる赤く染まっていって。
ガバっと再び抱きしめられてしまった。
「ちょっ……!?」
「大好きです! 鈴音先輩!」
その何度目かの告白に、今度こそ心臓が爆発しそうになって。
「――わ、わかったから、こういうのは禁止~~!!」
私の甲高い悲鳴が、一番星が煌めき始めた群青の空に大きくこだましたのだった。
――ちなみに、彼が有名ホテルチェーンの御曹司だと知ったのは、このもう少し後……私たちがお付き合いを始めてからのことである。
END.
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