そして、私はそこで重大なことを思い出した。
「あっ、バイト!」
今の今まですっかり忘れていた。完全に無断欠勤だ。
私が青くなっていると、鳴神くんが平然と言った。
「あ、大丈夫ですよ。俺、先輩は急病で休みますってバ先に電話しといたんで」
「え」
「それより! 俺、先輩に伝えたいことがあったんですよ」
はしゃぐように彼は続けた。
「俺、やっと身長175になったんです! 喧嘩には一応自信ありますし。これで俺、先輩の理想に全部叶いましたよね!」
――は?
「ちょっと待って。私、鳴神くんに理想の話なんてしたことないよね?」
「え?」
「身長のことだって、やっぱり言ったことなかったと思うし」
「えーと、そうでしたっけ?」
急に焦った様子でそっぽを向いた鳴神くんを見て、私はハっとする。
「もしかして、そのことも全部いづみから聞いた?」
「……ごめんなさい! 実はいづみ先輩に頼んで先輩の理想の男を聞き出してもらいました!」
勢いよく頭を下げられて、私は唖然とする。
一体、いつの話だろう。
私がいづみから理想の男子について訊かれたのは確か2年になってすぐの頃だ。
いづみと鳴神くんがそんな前から繋がっていたなんて、全然気づかなかった。
(いづみめ〜〜)
友人のニヤニヤとした笑顔が頭に浮かんだ。



