鳴神くんは理想の男子? 〜本好きの地味子ですが、陽キャな後輩くんになぜか懐かれています〜


 言いながら、なんとかしっかりと立つことが出来て私はほっとする。
 でも、一歩前へ出ようとしたところで少しふらついてしまって。

「危ない!」

 すんでのところをまた彼が支えてくれた。

「ご、ごめん、ありがと……!?」

 そのまま強く抱きすくめられてびっくりする。

「鳴神くん!?」

 声がカッコ悪くひっくり返ってしまった。

 だって、今この距離はマズイ。
 この壊れたような心臓の音がバレてしまう……!

 なのに彼は私の耳元で囁くように言った。

「鈴音先輩。俺、やっぱり先輩のこと諦めたくありません。まだ好きでいてもいいですか?」
「~~っ、い、いいから! だから離して!」

 もう、そう答えるので精一杯だった。
 鳴神くんはゆっくりと私を離してくれて、それからにっこりと笑った。

「良かった。俺、これからも鈴音先輩に好きになってもらえるように頑張りますね!」

 ……なんだか振り出しに戻ったかのようなその台詞を聞いて、どっと疲れた気がした。