「で、先輩自分で追い出したくせに後から追いかけてきて絆創膏くれたじゃないですか。『これ良かったら使ってください。早く病院行ってくださいね』って」
「だって、血だらけだったから」
「あれ、ほとんど俺の血じゃないですけどね」
「えっ」
「返り血ってやつですよ。でも、そのときの鈴音先輩が、俺には天使に見えて」
「てっ!?」
(天使!?)
あんぐりと口が開いてしまった。
「その優しさに俺は惚れたんです。で、先輩が着てた制服調べて同じ高校に入ろうと決めて、むちゃくちゃ勉強して、晴れて今年の春に鈴音先輩の後輩になったわけです」
……もう、驚きが過ぎて何も言えない。
「あのときは本当にありがとうございました。俺、先輩に声掛けてもらってなかったらきっと今でもあいつらとバカやってたと思うんで」
そうしてもう一度苦笑する鳴神くん。
(まさか、そんな前から私のことを想ってくれていたなんて……)
そう思ったらまた胸がドキドキとしてきた。
……これは、ちょっと本気でマズイかもしれない。



