そんないつかの自分の言葉が蘇る。
御曹司というのはさすがに冗談だとしても。
(まさか、そんなほぼ理想の人が本当にいるなんて……!?)
ふっと鳴神くんが苦笑した。
「無理しなくていいですよ。俺だって、ちょっと前の自分ヤバイなって思いますし」
「そんなことは……」
「でも、そう気付けたのは先輩のお蔭なんですよ」
「え?」
顔を上げると、彼はにっこりと笑って話し始めた。
「去年の丁度今頃かな。俺、鈴音先輩に会ってるんですよ」
「へ?」
去年の今頃、鳴神くんに会ってる?
(え、全然、覚えがない……)
「やっぱ覚えてないですよね」
「ご、ごめん」
「いえいえ、わからなくて当然です。あの頃の俺、髪型とか格好とかガチでヤバかったんで」
鳴神くんは歩きながら続ける。
「先輩、スーパーでバイトしてるじゃないですか」
「えっ! う、うん」
バイト先の話なんてしたことがあっただろうか……?



