「――それより、」
「!」
急に間近に迫った御影にクイと顎を持ち上げられてまじまじと顔を見られる。
「あいつってこういう地味なのがタイプだったんだ。意外~」
「触らないで」
首を振ってその手から逃れると、御影はにやりと笑った。
「へぇ~」
そして、彼はとんでもないことを言い出した。
「アンタさ、俺の女になんない?」
「は?」
思わずポカンとしてしまう。
「俺がアンタをモノにしたら、あいつどういう顔をするかなーと思って」
「ふざけないで」
心底腹が立ってきた。
「というか、何度も言ってるけど私と鳴神くんはなんでもないの。時間の無駄だからいい加減帰してくれない?」
「ふーん。……でも、そう思ってるのはアンタだけみたい?」
「え?」
ガンっ!!
「ぎゃあ!」
「ぐぁっ!」
「うぐ……っ」
外から、雨音に紛れて大きな音と悲鳴が立て続けに聞こえてきた。
(なに……?)
御影が扉の方を振り返りながら、にぃと笑う。
「来た」



