鳴神くんは理想の男子? 〜本好きの地味子ですが、陽キャな後輩くんになぜか懐かれています〜


 少しの沈黙が流れて。

「……先輩、それ、ガチで言ってます?」
「ガチだよ。ずっとそう言ってるよね私」
「なら……なんで先輩が泣きそうなんですか?」
「!?」

 少し怖いくらい真剣な目がこちらを見ていて、私は急いで彼から視線を外した。

(なんで私……)

 言われて初めて自分が泣きそうになっていることに気がついた。

 目の奥が熱い。
 喉の奥が苦しい。
 胸が痛い。

 フっている側の私がなんでこんなことになっているのか、意味がわからなかった。
 こんな自分を見られたくなくて、背中を向けて続ける。

「私だって、ホントはこんなこと言いたくないの! だけど、鳴神くん何度言ってもわかってくれないから」
「鈴音先輩」
「とにかく! もう不必要に話しかけてこないで!」
「……わかりました。困らせて、すみませんでした」

 そんなしっかりとした謝罪の言葉を聞いて、少しして彼の気配が消えて、私は静かに深呼吸をした。

(これで良かったんだ)


 ……この胸の痛みはきっと、罪悪感からくるものだろう。
 そう思うことにした。