「ひとりで大丈夫だって言ってるのに」
「いやいや、ここ人通り少ないですし先輩に何かあったら大変なんで!」
委員会の仕事が遅くなると鳴神くんはいつもこうして最寄り駅まで送ってくれる。
自分は電車は使わないのに、だ。
確かに駅まで10分程のこの道は閑静な住宅街にあり人通りは少ないけれど、ここで痴漢が出たとかそういう話は聞いたことがない。
「とか言って、ホントは鈴音先輩と一緒に帰りたいだけなんですけどね!」
隣でそんなふうに笑う鳴神くんを見て、私はまた小さくため息をついた。
「……よく飽きないね」
「何がです?」
きょとんという顔で訊かれて私は前を向いた。
「私なんかといたってつまらないでしょ」
「え、全然そんなことないですよ! 先輩と話してると俺ガチで楽しいです。それに俺、もっともっと鈴音先輩のこと知りたいんで」
また、そういう恥ずかしいセリフを言う。
「知ったって何も面白いことないから」
「いやいや、さっきの先輩の可愛い笑顔とか照れた顔とか、そういうのがもっと知りたいんで、俺」
「そ、そう……」
危うくまた顔が赤くなりそうになってしまって、辺りが薄暗くて良かったと思った。



