「今日もかわいいね。」
「やめてよ。」
「身長何センチ?」
「…132…?」
「小ちゃい〜!かわいいねえ。」
「これから伸びるし!」
「そう言い続けて?」
「…5年?」
「伸びてないよね。」
「………。」
リンルンがにししっと笑う。
「あれ、たま、いじけちゃった?」
「…別に。」
休み時間終了のチャイムが鳴る。
「あ、もうか。じゃあね!」
リンルンはそう言うと、手を振った。
私のつくえを離れると、別の子と楽しそうに会話していた。
私は頬杖をついた。
ため息が出たけど、無理もない。
また、リンルンに弄ばれちゃった。
あの子は私をいつもからかってくる。特に、この低い身長のことで。
でも実際のところ、私はイヤではなかった。むしろ、嬉しいというか……
いや、そういうと誤解を招く。
ただ、私は構ってもらえてるんだって思う。別にそれはいいことじゃない?
「黄玉さん、これ。」
突然声をかけられ、私は振り向く。
うしろにピンクのウェーブがかかった髪の女の子がいた。
手に包みを持っている。
私は包みを受けとると、軽くお辞儀をした。
女の子がにこっと笑って「食べてね。」と言う。
再びわたしはお辞儀する。
「(チッお礼くらい言えよ渡してやったんだから。)」
女の子の心の声が聞こえる。
私はやばい、と思った。
嫌われた?どうしよう、せっかくくれたのに、お礼言えなかったから…どうしよう、今からでも言う?遅い?でも…うううう。
考えすぎたのか、私は気を失った。

気がついて目を開けると、体を起こした。
周りを見ると、教室ではなかった。
「あ、たま!平気?」
リンルンの声が飛び交う。
となりを見ると、心配そうな面持ちのリンルンがいた。
「ああ…まあ。」
私は曖昧に答えた。まだすこし頭痛がする気がした。
リンルンがにこっと笑う。
「よかった。たま、もうやめなよね?」
「なにを?」
「心を読むのを。」
私はすこし考えてから言った。
「やめられるの?あれって。」
リンルンの呆れたため息が聞こえた。
「前も言ったでしょ?読もうと思わなければいって。」
「そうだっけ…ごめん。」
かすれた声で言うと、リンルンの笑い声が聞こえた。リンルンの笑い声を聞くと、すこし気持ちが落ち着いた。
「いいよ。忘れるよね。てか、忘れなかったら頭パンクするっつーの。」
私は「あはは。」と笑った。「リンルンらしいね。」
リンルンは「あたしらしいって?」と不思議そうに聞いた。
「うーん、物事をいい方に捉えてくれるっていうか。」
「ふーん。」リンルンがつぶやくように言った。「そうかも。」
ドアの開く音がして、リンルンがイスから立ち上がった。
コツコツと足音がして、保健室の先生が現れた。
「だいじょうぶ?黄玉さん。あ、水崎さん、ありがとね。あとは先生に任せて。」
先生が言うと、リンルンは頷いて保健室を出ていった。
私と保健室の先生が残された。
先生が近くにくると、私のおでこに手を当てた。
先生の手は温かかった。
「うん、熱はないわね。」
優しい先生の声が聞こえる。
「このまま寝てる?それとも戻る?」
先生に聞かれ、私はちょっと考えた。
そして、「戻ります。」と言った。
先生が心配そうに言う。「そう?だいじょうぶ?無理しないのよ。」
「はい。だいじょうぶです。」
キッパリと言うと、私はベットから床に移動した。
先生にお辞儀をして、保健室を出た。
「(まったく、頑張りやね。)」
先生の心が聞こえた。

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教室に戻ると、真っ先にリンルンが話しかけてきた。
「だうじょうぶなの?」
私は返事の代わりに頷いた。
リンルンの顔がほっとする。
「よかったあ。じゃ、行こっか。」
どこに、と聞く前にどこへ行くのか分かった。
中庭だ。