おまめ星大冒険!

あるキラリン市の家に、3姉妹が住んでいた。
 長女のもるほど
 次女のなそでい
 末っ子のなるほど
 三角形の赤い屋根の小さな家。
 3姉妹は仲良く暮らしていた。
 もうすぐ秋という9月のはじめ、長女のもるほどはじっと窓を見ていた。
「ねえ、わたしたちに、親っていたと思う?」
「えっ」絵を描いていた次女のなそでいが、びっくりして言った。
「どうかなあ。まあいつかはいたんじゃない?」床で寝そべっていた末っ子のなるほどが、そっとつぶやいた。
「適当ね。…今はいないのかしらね?」
「さあ?」となそでいとなるほどは首をかしげた。
「2人はさ、気にならないの?」と不機嫌そうにもるほどが聞いた。
「うーん、気にはなるけど…」となそでい。
「もういないんでしょ?」となるほど。
「ちょっとなるほど!わからないじゃない!」
 そう言ってからなるほどをにらんだ。
 でもなるほどはそんなこと気にせず、床でゴロゴロとしていた。
 秋の虫の鳴き声が聞こえてきた。ふと3人はその声に耳をすませた。
「いいわね、秋って。わたし秋が一番すきかも。」虫の声に耳をすませたもるほどがつぶやいた。
「うん、あたしも!」となるほどが同感した。「おいしい食べものいっぱいだもんね!」
 なるほどの言葉に、なそでいが付けたした。
 しばらく虫の音を楽しんでいると、ドアをたたく音が聞こえた。
「あれ?だれかしら?」座っていたもるほどは慌てて立ち上がり、玄関へと急いだ。
 ドアを開くと、おばあちゃんが立っていた。
「おばあちゃん!」というもるほどの声に、部屋にいた2人も飛びこんできた。
「おばあちゃん!」
「やあ、孫たち。とりあえず中に入ってもよろしい?」
 その言葉に3人ははっとし、急いで道を開けた。
 4人でテーブルを囲み、座った。
「ねえおばあちゃん、今日はどんなお話をしてくれるの!?」
 まず、なそでいが聞いた。
「おばあちゃん、今日は何のスポーツをしてくれるの!?」
 次になるほどが聞いた。
「おばあちゃん、今日はどんなおいしい料理を教えてくれるの!?」
 最後にもるほどが聞いた。
 みんなが言いおわると、おばあちゃんは見ぶりで教えてくれた。
「やった、今日はお話してくれるの!」となそでいは喜んだ。
「そうだよ、じゃあ、さっそくしようか。」
 他の2人は残念そうに、おばあちゃんの話を待った。
 おばあちゃんはかけている小さなめがねを取り、静かに話しはじめた。
「アナタたち3人がまだいないころね。この星で、争いが起こったの。
 バトルともいうわね。私たちト族と、キラリン族、なんで族での激しいバトルが始まったのよ。」
 まだ最初の方なのに、3人は話に引きこまれた。
「原因は…そうね、文化のちがいというものかしら。同じ地に3つものちがう民族がいれば、すれちがいというのは起こってしまうの。最初は、ちょっとの口げんかだったのよ。でもそれがだんだん、大きくなってしまってね。」
 3人は真剣にじっと話を聞いた。いくつも気になることがあったけど、ガマンした。
「ついには大バトルへと発展してしまったの。そのせいで多くの民族が亡くなってしまったわ。私の…夫もね。幸い、私の子どもである、アナタたちの親は、生きのこれたのだけど。」
 ガマンできなくなったなそでいは、ついに質問した。
「でもわたしたちの親、いないよ!どうして?」
「それはね、なそでい。別々のところにいるんだ。ちゃんとアナタの親は生きているの。」
 おばあちゃんの意外な答えに、3人はびっくりした。
「おばあちゃん、どういうこと?詳しく教えて!」
「今から言うわよ。そうね、アナタたちとは離れた方がよかったの。詳しくは言えないけれど…。」
 おばあちゃんの曖昧な答えに、なそでいは納得いかなかった。
「言ってよ!気になる!そして会ってみたいの!」
「…そうね…もう言う時なのかしらね…」おばあちゃんは覚悟を決めるようにつぶやいた。そして
「信じてくれるなら、言うわ。」といつもとはちがう、低い声で言った。
「うん、信じる!」なそでいは約束した。
「…実はアナタたちの両親はアナタたちを捨てようとしたのよ。」
「えっ?!」思わず他2人も反応してしまった。
「バトルがおさまって20年後、親はアナタたちを産んだ。でも3人目を産んでからは限界がきて、私に捨てると言ってきたの。」
 3人はショックを受けながら、続きの言葉を待った。
「それなら私が育てる!と言って私が育てたのよ。でももう今じゃ、3人で生活できるなんて、本当すごいわ。」
 おばあちゃんはしみじみとそう言うと、すこしだけおばあちゃんの目がうるんだ。
「わたしたちを捨てるって…どこに?」となるほどがそっと聞いた。
「川にって言ってたわ。」そしておばあちゃんがそっと答えた。
「川って…そしたら溺れて息できなくなっちゃうよ!」とずっと黙っていたもるほどがわめいた。
「そうよ、それにまだ3人は小さかったし…。」それだけ言って、おばあちゃんは話をやめた。そして、話しつかれたのか、座ったまま寝てしまった。
 長女のもるほどがベットまで運んであげた。
 そしてまたなるほどは床に寝ころび、なそでいは絵を描きはじめた。
 長女のもるほどもつられてベットに寝っころがって寝てしまった。
 秋の虫の音はまだ鳴りひびいていた。
 4人は気がつかなかった。この虫の音が、これからくる大ヘンなことを知らせているということを…。