おまめ星大冒険!

ハッとして目を覚ますと、フェアはまた知らないところにいました。
 洞窟に戻されるのかとばかり思っていたフェアでしたから、ちがう景色が出てきてびっくりしました。
 なんと、地面が水なのです。フェアは冷たくて、思わず
「ひゃっ」
 と声を上げました。
 そして、慣れない水の上を歩いていきました。
 ココはどこなのかしら…?今、おまめ島へ向かっているのかしら…?
 途端にフェアは不安になってきました。
 荷もつから地図を出そうと思って、荷もつを探しました。
 でも、大ヘンなことに、荷もつが見つからないのです!
 ちょっと前まで入れものを手で抱えていたはずなのに、今はホッシィからもらった包みしか持っていません。慌てて、水の中を探しました。
 でも、どこにもありません。
 どこかへ落としてしまったのかしら…どうしよう!
 フェアは血の気が引いてきました。
 どうしよう、あそこには大切な地図と食料が入っているのに!
 さらに焦って、フェアは水の地面に転んで、水の中に入ってしまい、溺れそうになりました。なんとか、溺れずに、出ることができました。いやなことつづきで、フェアの気分はすっかりしぼんでしまいました。もう何もかもどうでもよくなって、とりあえず前へと進んでいきました。
 ふと、歩きつづけていたフェアは、足を止めました。
 前に、水のお城があるのです。滝や水の塀で囲まれていました。フェアは、幻想的で美しい水の城に、あっという間に釘づけになっていました。今さっきまでしぼんでいた気持ちは、一気に膨れあがりました。わくわく、どきどきしてきました。
「なんて美しくしいところなの…本当にこんなところがあるなんて!」
 コーフンしきった声でフェアは叫びました。
 そして、美しい水の城に近づいてみました。
 フェアは、小さい頃から絵本が大好きでした。
 大人になった最近でも、時々読みかえしています。
 本をたくさん持っていましたが、特に大好きなのがウォーター城という本です。絵本なのですが、これは水のある都をテーマにしているのです。その世界と、今いるところが似ていて、フェアの胸はありえないくらいドッドッと鳴っていました。
 目の前にくると、なんと、水になっていました。
 あれ?フェアは首を傾げました。さっきまで、たしかに城の形の水の固まりがあったのです。でも今は、ただの水でした。手に取ってみても、やっぱり水です。おかしいと思い、またフェアは来たところへ戻っていきました。
 やっぱり、お城の形をしています。一瞬にしてフェアの目は奪われました。
 もう一度近づくと、やっぱりなくなってしまいます。
 フェアは混乱してきました。おかしい、どうなってるの?なぜ近づくとなくなってしまうの…!?
 何度も近づいては離れてを繰り返しましたが、やっぱり結果は同じです。
「なんなの、どうしてなくなってしまうの!」
 だんだんとフェアはいらいらしてきました。
 そしてふと、ホッシィからもらった包みを思い出しました。
 いらいらがすっとわくわくへ変わりました。
「一体、何をくれたのかしら…」
 そうつぶやくと、丁寧に包みを開けました。
 そして、中から何かを取りだしました。
 何かとは、光でした。
「わあ、これは光?でも、どうやって使うの。ぴかぴかしてキレイだけど…。」
 困ったようにフェアは光を見つめました。
 そして、はっといいことを思いつきました。
 これを、あの水の城へ投げてみたら、何か変わるかもしれない。
 フェアは思いっきり城めがけて光を投げました。
 すると、ぴかっと城の辺りが光りました。
 まぶしくて、思わずフェアは目をつぶりました。
 そして、目を開いてみると…。
 予想通り、何かが変わっていました。
 水の城が、くっきりとして見えるのです。
 ためしに近よってみると、見事になくらなくなりました。
「やっぱり!あたしって、本当天才だわ!」
 フェアは足をぴょんぴょんさせながら、喜びました。
 そして、城の方へと入っていきました。
 そこは、とってもフシギなところでした。
 何もかも、水なのです。
 しばらく、水の都を満喫しました。
 そして、目的地の城に、ようやく辿りつきました。
 すっごく大きくて、透明です。水なのですが、とってもフシギなことに、しっかりもしてるのです。ドキドキしながら、フェアは城に中へ入っていきました。
 
 中は、しいんとしていました。そして、やっぱり中のものも、水でできていました。柱も、シャンデリアも、床も、カべも、天井も…。
 フェアは歩きながら、わくわくしっぱなしでした。
 そして、広場のようなところへ出ると、真ん中に水でできた階段がドーンとありました。
 フェアはそうっと水の階段をのぼっていきました。
 階段は、果てしなくつづいていました。
 フェアの足が、もう水に慣れてきました。が、水はひんやりして冷たいので、足はそろそろ凍ってしまいそうでした。フェアは、何とか耐えながら、果てしない階段を進んでいきました。そして、やっと、ゴールが見えてきました。広ーいところへ出ました。息を切らしながら、フェアはそこへ入っていきました。そして、目の前に、おまめがいることに気がつきました。おまめはフェアに気がつくと、振り向いて言いました。
「おや、ワタシの城に勝手に入るとはねえ…どういうつもりかしら?」
 フェアはびくっとしました。水の音が、声みたいになって、しゃべっています。
 なんだか怖くって、フェアはそのおまめから逃げようとしました。
 けれど波の渦に捕まってしまいました。
「ココはワタシが支配する都市、水の都さ。でも、アンタはここの者じゃなさそうだね?どうやって入ってきたのかしらん。」
 水の音が聞きました。
「え、えっと、光の空間でもらった、光を投げて…。」
 おずおずフェアが答えました。
「ほーう?だから水のバリアが壊せたのか…ちっ。
 まあ、それはいい。でもよくないことだから、君にはバトルで負けてもらうよ!」
 大雨の時に荒れくるうような波の音が、声になって聞こえました。
 フェアは、突然のバトルで、びっくりしました。
 でも、やるからには負けるわけにいきません。
 たしか、さっき、水のバリアが光で壊れたと言っていました。
 そこで、水は光に弱い、と考えました。
 ワザで7色の光を、おまめにあてました。
 おまめは予想通り、光に弱いようです。
 だんだん弱っていきました。
 完全に倒れたところで、フェアは光をとめました。
 おまめは、傷ついた体をよろよろと立たせました。
「ふっ、このワタシが負けるわけ…ゔっ」
 おまめはまた倒れてしまいました。
「アナタ、お名前は?」
 フェアが優しく聞きました。
「はあ?何で教えなくちゃなのよ!」
「だって、アナタとのバトルに、あたしは勝ったんですもの。言うことくらい、きいてよ。」
「うう、ワタシは水の女神、ウミノカミだ。」
「どうやったら、下のところに帰れるの?」
「ワタシの魔法で帰してやる…」
「アナタ、魔法が使える、女神ですって!すごいおまめなの!」
「そうですわ。それで、ココを支配してきたのよ。ココの者たちもね」
「でも、おまめなんて、1匹もいなかったわ。どうして?」
「みーんな、ワタシの言うこと聞かなかったからよ。地下の牢屋に閉じこめているの。」
「まあ、なんてひどいの!」
 フェアが怒って叫びました。
「そう?仕方ないでしょう。言うこときかない方が悪いんですもの!
 ひどいのは向こうでしょう?」
「でも…言うこときかなかったってことは、アナタの支配するのに、不満があったんじゃないの。ココは、アナタのものだけじゃないのよ?みんな、とても苦しんでいるんだと思うわ!」
「え?このワタシに、不満ですって?ココは、ワタシのモノじゃない?」
「そうよ!アナタは女神なんでしょう?なら、もっと優しくすべきよ。支配じゃなくって、見守ってあげるの。それこそ、真の女神よ!!」
「そ、そうなのかしら…たしかにそうだわ…最初はそうだったのに…いつのまにか…。」
 ウミノカミはだんだんと落ち着いてきました。
 そして、突然泣きだしてしまいました。びっくりして、フェアはあわあわしました。
「ごめんなさい、少し言いすぎたわ。」
「いいえ。」
 ウミノカミは首を横にふると、
「気づかせてくれてありがとう。」
 と囁きました。フェアは、ほっとしました。
「よかったわ。これからは、みなさんを大切にね。」
 にっこりしてフェアが言いました。
「ええ。じゃあ、アナタを帰してあげるわ。」
 ウミノカミはそう言うと、水のとびらをつくりだしました。
 フェアが、コーフンしきった声で聞きました。
「まあ、すごい!どうやってつくったの!?」
「ふふふ、秘密よ。じゃあ、本当にありがとう。戻ってどうぞ。」
 いたずらっぽくウミノカミが言いました。
 教えてもらえなくて、フェアはちょっとがっかりしました。
 でも、まあいいやと思い、水のとびらの中へ入っていきました。