○土曜日昼・大型ショッピングモール
私服姿で幼児向けのおもちゃを見ている綺世と綴。
車のおもちゃとくまのぬいぐるみを持つ綺世のアップ。


綺世「ねぇつづ、どっちがいいと思う?」
綴「うーーーーん……」※真剣


車のおもちゃを指差す綴。


綴「男の子なら車のおもちゃの方が好きそう」
綺世「けど下の弟の方はぬいぐるみないと寝れないんだよね」
綴「どっちも買おう!」
綺世「そうするか」


綴【今日は土曜日。あやくんと一緒にショッピングモールに来ています。
あやくんの弟さんたちがもうすぐ誕生日だから、プレゼントを一緒に選んで欲しいって言われたの】


会計を済ませ、おもちゃ屋から出る。


綴「いいなー双子の弟! 私も会ってみたい」
綺世「いいよ、今度来る?」
綴「行きたい!」


綴、かわいらしいスイーツショップを見つける。


綴「! ねぇあやくん、お茶しない?」
綺世「いいよ」
綴「やったあ!」


○スイーツショップ
夢かわ系のかわいらしい内装。ケーキやドーナツやパフェなどがいっぱい。


店員「いらっしゃいませ。本日カップルデーとなっております! 限定メニューもございますので良かったらどうぞ!」
綴「あ、いや、私たちは」
綺世「カップルでーす」


綴の肩を引き寄せて笑顔で答える綺世。


綴「!?」
綴(え、えぇーーーー!?)


驚きのあまり声を失う綴。ニコニコ平然としている綺世。
カップルシートに案内される。カップルシートは真っ赤なハートのソファで横並びで座れる、二人専用のシート。狭めで二人の距離が近い。


綴「あやくん、なんであんなこと言ったの?」
綺世「別にいいじゃん。デートなんだし」
綴「でっ、でえと!?」
綺世「俺はデートのつもりで誘ったんだけど」
綴「〜〜〜〜っっ」


真っ赤になって口をパクパクさせる綴。


綺世「デートだよ」


ニカッと笑う綺世のアップ。
笑顔に思わずキュンとしてしまう綴。


綴(ううっ、なんかあやくん慣れてない?)※ドキドキ
綴(なんであやくんはそんな風に……もしかして、私のことが好きとか……)

母親のことが脳裏に過ぎる綴。
自分と父を捨てて他の男と出て行った母のことがトラウマになっている。

綴(ないよね? だって私たち、幼なじみだもんね……?)※自分に言い聞かせるように


店員「お待たせしましたー。くまさんのお昼寝パンケーキになります!」


パンケーキをお布団のようにして寝るくまさんのかわいらしいスイーツ。
目をキラキラと輝かせ、写真を撮りまくる綴。


綴「!! かわい〜〜!!」
綺世「へー、よくできてるね」


綺世はくまさんの形をしたアイスクリームを注文した。


綴「あやくんのくまさんアイスもかわいい!」
綺世「でもパンケーキのが凝ってるよ」
綴「パンケーキ食べてみる?」
綺世「いいの?」
綴「いいよ! はいっ」


フォークを綺世に向けてあーんしようとする綴。


綺世「えっ」
綴「? 食べないの?」
綺世「いや……」


真っ赤になって顔を隠す綺世。


綴「えっ」
綺世「急にやめてよ……」
綴「えぇーー!! あーんで照れるの!? それよりすごいことしたくせに!?」
綺世「〜〜……、不意打ちはずるいでしょ」


頬を赤らめたまま、むすっとしている綺世。押しに弱い。


綴「ふへへ」
綺世「何にやけてんの」
綴「いひゃい」


にやける綴の頬をむにっとつまむ綺世。


○ショッピングモール
スイーツショップを出てルンルンで歩く綴。


綴(ふふっ、さっきのあやくんかわいかったな!)
綺世「つづ、なんか見たいものある? 欲しいものとか」
綴「ん? 特にないよ」
綴(てゆーかさっきのパンケーキかわいかったけど、結構お高かったし……節約しないとっ)


スイーツショップの伝票を見て驚愕する綴のカット。


綴「あやくんは他に見たいものないの?」
綺世「見たいものっていうか、やりたいことはあるかな」
綴「なになに?」


○ショッピングモール内のゲームアーケード
綴「ゲーム!?」
綺世「やってみない? 子どもの頃はやらせてもらえなかったし」
綴「あ……」


〜回想〜
ゲームセンターに行こうとした小学生の綴と綺世を叱る綴の母。

綴の母『ゲームセンターなんて低俗なところに行くのはやめなさい』
〜回想終了〜


綴(あやくん、覚えててくれたんだ……)
綺世「つづ、何やりたい?」
綴「私ゲームしたことないからよくわかんないかも」
綺世「じゃ、あれは?」


UFOキャッチャーを指差す綺世。かわいい動物のぬいぐるみがたくさんある。


綴「やってみたい!」
綺世「やろっか。すみませーん」


店員を呼ぶ綺世。店員と何かを喋った後、綴の元に戻ってくる。


綺世「この台、無料でやり放題だってさ」
綴「ええっ!?」
綺世「気にしなくていいよ。そもそもここ、玖央ホールディングスの経営グループだし」
綴「そ、そうなんだ……」
綴(すごすぎる!!)


UFOキャッチャーをする綴。なかなか上手くできない。


綴「え〜ん、難しいよぉ!」
綺世「どれが欲しいの?」
綴「あの子」


ピンク色のもふもふしたトイプードルのぬいぐるみのアップ。


綺世「俺が取ってあげる」
綴「あやくんできるの?」
綺世「任せて」


何度もチャレンジするが上手く取れない綺世。十分経過しても全く取れない。


綺世「……っっ」※ムムっとした表情
綴「わーー!! もういいよ、あやくん!」
綺世「やだ。俺がつづにあげたいから」※ムスッとした表情
綴(あやくん……ムキになってかわいい♡)


一生懸命取ろうとする綺世のことをキュンとしながら見守る綴。
ちょん、と綴の服の裾を誰かが引っ張る。
驚いて振り返る綴。黒髪ツインテールの小学一年生くらいの女の子が綴の裾を引っ張っている。


綴「えっと、あなたは……?」
女の子「にーに!」
綴「えっ」
女の子「にーにどこ?」
綴(もしかして迷子かな?)
結川「真音(まのん)!」


私服姿の結川が駆け寄る。真音は女の子の名前。


結川「勝手にどこかに行っちゃダメじゃないか」
真音「にーに!」
綴「結川くん!?」
結川「千歳さん」
綴「もしかして、結川くんの妹さん?」
結川「うん。妹が迷惑かけてたらごめんね」
綴「全然!」
綴(結川くん、妹いたんだ! かわい〜)


結川兄妹にほっこりする綴。


綺世「誰?」


明らかに警戒心を露わにした綺世。綺世の姿に結川も表情を変える。
綺世と結川のピリッとした空気に全く気づいていない綴。


綴「同じクラスの結川くん。こっちは……」
結川「知ってる。一年の玖央くんだよね」
綺世「……」
真音「にーに! うさぎさんとって!」


真音がUFOキャッチャーを指差す。もこもこしたうさぎのぬいぐるみも入っている。


結川「この前もやったじゃないか」
真音「うさぎさんほしいの〜!」
結川「わかった、わかった。ごめん、僕もやってもいいかな?」
綴「もちろん! 結川くん、UFOキャッチャーとかやるんだね」
結川「こう見えて結構得意だよ。千歳さんはどれが欲しいの?」
綴「えっと、あのトイプードルが」
結川「わかった」


UFOキャッチャーを始める結川、うさぎとトイプードルのぬいぐるみを同時にキャッチする。


綴「わーー!! すごーい!!」
真音「うさぎさーん!!」
結川「はい。千歳さんもどうぞ」


うさぎは真音に、トイプードルを綴に渡す結川。


綴「えっいいの?」
結川「もちろん」
綴「ありがとう!」


華やいだ笑顔でトイプードルを抱きしめる綴のアップ。
綴のことを愛おしそうに見つめる結川。
結川と綴の間に割って入る綺世。結川を睨みつける。


綴「あやくん……?」
綺世「つづは俺とデートしてんだよ」


ぐいっと綴の肩を抱き寄せる綺世。


綺世「邪魔しないでくれます? センパイ」
結川「……っ!」
綴「ちょっ、ちょっとあやくん!」
綺世「行くよ、つづ」


綴の腕を引っ張って立ち去る綺世。


綴「あ、あやくんっ!」


そのまま引っ張られて連れて行かれる綴。
二人の後ろ姿を複雑そうな表情で見つめる結川。拳をぎゅっと握りしめる。


○ゲームアーケードから出たショッピングモール内
綴の腕を引いてズンズン進む綺世。


綴「あやくん! 待ってってば!」
綺世「……」


立ち止まって振り返り、綴のトイプードルぬいぐるみをヒョイっと取り上げる綺世。


綴「ちょっと! 何するの!?」
綺世「こいつそんなにかわいい?」※むーんとした顔
綴「かわいいよ!!」
綺世「トイプーのくせにピンクだし」
綴「そこがかわいいの!」


ぬいぐるみを高く上げる綺世とぴょんぴょん飛び跳ねて取ろうとする綴。


綺世「……俺が取りたかったのに」
綴「あやくん、拗ねてるの?」
綺世「拗ねてない!」※ムスッと
綴(拗ねてる……)
綺世「とにかくこいつは没収」
綴「なんでーー!? あやくんに似てるのに!」
綺世「え? ……俺に似てる?」
綴「うん、だからこの子が欲しかったの!」
綺世「…………」


トイプーをじっと見つめる綺世。


綺世「……え、似てるか?」
綴「似てるよ! 髪の毛ピンクだし!」
綴(たまに拗ねたり甘えたりわんこっぽいところとかね!)
綺世「…………」
綴「ぶっ」


トイプーを綴の顔に押し付ける綺世。


綴「もーー……」←と言いつつぬいぐるみを抱きしめる
綴(やっぱりあやくん反抗期なのかな?)※何も察せていない

綺世(かわいいと思ってしまう自分が憎い。実際かわいいけど)
綺世「……はぁ、やっぱりまだダメか」※弟扱いされてるなと複雑さを滲ませる表情