幼なじみは、私だけに甘い番犬


「名前、何て言うの?」
「……」
「色白だね~。日焼けしたくないんでしょ~?」
「俺ら、車で来てるから、ドライブ行かない?」
「……ッ?!」
「ね?いこーよ~~っ!」
「はっ……離して下さいっ」

 無視しようとしたら、腕を掴まれてしまった。
 しかも、2人がかりで両腕を掴んで来るから、身動きが取れない。
 
 途端に震え出す体。
 みるみるうちに視界が歪み、涙が溢れ出す。
 大声を出して、玄希を呼びたいのに、怖くて声が出ない。
 泣き顔を悟られたくなくて、必死に俯きながら抵抗を試みる。
 やだ、離してよ。 
 怖い、助けて……。

「おいっ、椰子から手離せ」
「へぇ~、椰子ちゃんって言うんだ~」
「彼氏くん、超イケメ~ン」
「彼女放っておいちゃダメでしょ。友達と遊びたいなら、遊んできていいよ~。俺らが、椰子ちゃんの相手しててあげるから」
「あ゛?」
 
 掴まれていた腕を払うようにして、玄希が私を背後に匿うようにしてくれた。

 だけど、場数の違い?
 それとも、玄希のことを見下しているのか、お兄さん2人組は慣れた感じで全く動じてない。
 よく見ると、髪は拓兄みたいに染めてて、ピアスもかなりたくさんしてる。
 見るからに遊んでる風の2人組だよ。

「残念。彼氏じゃなくて、許嫁なんで。部外者は引っ込んでろよ。俺の女にこれ以上触れたら、ただじゃおかねーぞ」
「きゃっ」
「油断も隙もあったもんじゃねぇ」

 ひょいと私を肩に担ぎ上げた玄希は、みんなのところへと歩き出した。