幼なじみは、私だけに甘い番犬

(玄希視点)

「長谷川」
「……椰子は?」
「恥ずかしがってて、出て来れないって」
「ここまで来て、今更だろ」
「うちらは先に行くから、後で連れ出してあげて」
「……ん」

 雪村(琴乃)は、クラスメイトの河瀬(かわせ) 愛理(あいり)横田(よこだ) 香奈(かな)と一緒にビーチへと繰り出して行った。

「玄希~、先行ってるな~」
「おぅ」

 純也(町田)が他の連中らを連れて、雪村たちに声をかけに行った。

「脱がねーの?」
「ん?」

 声をかけて来たのは龍斗。
 日頃から筋トレでもしてるのか。
 バッキバキに割れている腹筋が、俺の視線を釘付けにする。
 炎天下の中、ラッシュガードを着ているのは俺くらいなものだ。

「龍斗、仕上がってんじゃん」
「俺はいつだってこうだっての」
「うらやま~」
「お前だって、また鍛えたらいいだろ」
「……けど、同じにはなんねーよ」
「それ、自分で心にハンデつけてんじゃん。カッコ悪っ」
「うっせーな」
「顔でカバーできるから、気にすんなって」
「それ、嫌味か?」
「褒めてやってんじゃん」

 どんなに鍛えたとしても、手術痕が主張するから。
 昔はモテ要素の1つとして、シックスパックに割れた腹筋を自慢するのが好きだったけど。
 今は周りに気を遣って披露したいとは思えない。
 まぁ、龍斗の言う通り、気にしなきゃいいんだろうけど。

「椰子ちゃんと人目につかないとこでいちゃつくなよな」
「余計なお世話だっつーの」

 浮き輪を2つ膨らました龍斗は、それを手にしてビーチへと駆け出して行った。