幼なじみは、私だけに甘い番犬

(龍斗視点)

 クラスメイトや同級生らと海に向かっている電車内。
 俺の目の前でいちゃつく玄希と椰子ちゃん。

 先月起きた『グレープフルーツ事件』で、玄希は体を張って椰子ちゃんを守ろうとした。
 俺だって、椰子ちゃんに向けられる嫌がらせを俺なりに阻止しようとしてたのに。
 何だよ、命がけで守るとか。
 そんなの絶対に無理じゃん。
 敵いっこないよ。
 それじゃなくたって、積み重ねて来た時間のアドバンテージだってあるってのに。
 同じ土俵にすら上がれないとか、マジで拷問じゃん。
 せめて、同じフィールドに立って、真剣勝負したかったな。

 かといって、玄希がいない3年の間に手を出すことだってできたのを、しなかったのは俺だ。
 余裕をぶちかましていたツケが今頃返ってくるとはな。

「龍くん」
「ッ?!」
「眉間にしわよってるよ?」

 人差し指で俺の眉間をぐいっと押し上げる琴乃ちゃん。
 俺の心中を察したのか。
 気を紛らわせてくれた。

「イケメンが台無しだよ」
「フフッ、たまには渋い顔でもと思ったけど、俺のキャラじゃないな」
「うん」

 普段はクールな琴乃ちゃんだけど、気遣い上手の姐御肌だから、こうやっていつの間にか癒されてるんだよな。
 こういう子が彼女だったら、きっと毎日が平穏なんだろうな。