幼なじみは、私だけに甘い番犬

(椰子視点)

 7月下旬、夏休み中のとある日。
 梅雨が明けて、ぎらつく太陽の陽射しの中、椰子と玄希は最寄り駅で琴乃と龍斗と合流し、その足で2駅離れた乗り換え駅で同級生の子たちと合流した。
 今日は同級生らと神奈川の海に海水浴に行く予定なのだ。

 玄希はあのグレープフルーツジュース事件の後、数日間検査入院し、その後退院した。
 幸いにも処置が早かったこともあり、大事にならずに済んだのだ。

 それからというもの、椰子のクラスメイトだけでなく、同学年の子たちには玄希の株は急上昇した。
 それまでもかなりモテていたが、今は某アイドル並みに大人気になっている。
『彼女のために体を張る』『暴力で捻じ伏せるのではなく、行動で愛情を示す』なんて推せる!と、もはや崇拝の域だ。



 泳ぐのも、水着になるのも苦手な椰子。
 さらに発展途上の胸元が心配で、1週間ほど前に琴乃に付き添って貰って水着を新調した。
 あまり肌の露出が目立たないタイプのタンキニで、『ガーリータイプが椰子に似合う』と琴乃に押し切られ、人生初めてのビキニを買ってしまった。

「電車に酔ったか?」
「……ううん、大丈夫」
「浮かない顔してっけど」
「……そんなことないよ」

 さすがに『水着が恥ずかしくて』だなんて、玄希に言えない。