幼なじみは、私だけに甘い番犬


 放課後、正門を出た椰子は国道まで全力疾走し、『空車』と書かれたタクシーを捕まえて飛び乗った。
 玄希の母親にメールで確認し、玄希は母親が勤務している都立病院の救急外来で点滴を受けているらしい。
 居ても立っても居られない椰子は、病院へと向かう車内で無事を祈り続けた。


『都立江南病院』に到着した、椰子。
 逸る思いで救急外来受付の前で玄希の母親に連絡を入れる。
 すると、間もなくして中からスクラブ着の上にカーディガンを羽織った玄希の母親が現れた。

「椰子ちゃん」
「おばさん、玄希は?玄希は大丈夫なんですよね?!」

 椰子は今にも零れ落ちそうな涙目で、玄希の母親の手を掴む。

「検査結果はまだなんだけど、とりあえずは落ち着いてるわ。今さっき寝たところなんだけど、顔見ていく?」
「はいっ」

 玄希の母親に案内されER室内に入ると、青白い顔で寝ている玄希がいた。
 手首に点滴の針が刺さっていて、腕に血圧計、指先にパルスオキシメーター。
 そして、胸元から心電図用のリード線が幾つも出ていて、Yシャツのボタンの代わりにバスタオルが掛けられている。

「椰子ちゃん、ちょっと玄希を見ててくれるかな。私一応勤務中だから、一旦担当部署に事情を説明して来るから」
「はい」
「ごめんね~、ちょっと行って来ます」

 勤務中に呼び出されたのだろう。
 玄希の母親はER室のスタッフに声をかけて、持ち場へと向かって行った。