幼なじみは、私だけに甘い番犬


 教室内が騒然とする。
 駆け込んで来たのは、隣りのクラスの町田 純也という男子生徒で、玄希がいつも仲良くしている男友達だった。

 教室内を見回した町田が椰子を見つけて駆け寄って来た。

「倉木さんっ、大変なんだ!ちょっと来てっ!!」
「へ?」

 がしっと町田に腕を掴まれ、有無を言わさず席を立たせられ、クラスメイトの視線が集まる中、教室の外へと連れていかれる。

「あの……」
「ここじゃ話せないから、……ごめんね」

 額に汗を滲ませた彼は、人気のない特別棟へと続く渡り廊下の端まで私を誘導した。
 そして、大きく数回深呼吸した彼が振り返り、私を真っすぐと見つめて来た。

「玄希って、グレープフルーツを摂取するとどうなるの?」
「ふぇっ?!」
「ねぇ、どうなるの?」
「……どうって、摂取した量にもよると思いますけど、血中濃度が上がると、腎臓に負担がかかるので腎機能が低下したり、急性腎不全とかになるかと思い……って、玄希がっ、グレープフルーツを摂取したんですか?いつ?どこで?どれくらい?!」
「マジか……」

 町田くんの顔がみるみるうちに歪んでいき、『どうしよう、どうしよう』とブツブツと念仏みたいに唱え始めた。