幼なじみは、私だけに甘い番犬

(龍斗視点)

 球技大会数日前の朝、SHR後の教室。
 龍斗のクラスでは、球技大会当日につけるヘアアイテムが配られた。

「他のクラスの子にはまだ見せないでね~。当日まで内密に~」
「目がチカチカするな、やべぇ色」
「だからみたいね~、きっとそれが狙いでしょ」

 蛍光色のヘアピンとヘアゴムを手にして、無意識に『やべぇ色』と口走ると、隣りの席の女子が俺の言葉に即座に反応した。
 視覚を奪うという点においても、目くらましという点においても作戦勝ち?なのか??
 よく分かんねーけど。

***

 昼休み、残り5分。
 予鈴が鳴り、玄希が自分のクラスへと帰っていく。
 そんな玄希を追うように俺は教室を後にした。

「俺になんか用?」
「方向が同じだけ」
「あっそ」

 不服そうな玄希に、人差し指で目的地であるトイレを指差す。

『GWに何があったんだよ』
『椰子ちゃんが嫌がることしてねーよな?』等々。
 言いたいことも聞きたいことも山ほどあるけど、それを口にしてしまったら、2人の仲を認めてしまうのと同じだと思って。
 なけなしのプライドがちらつく。

 明らかにGW後に2人の雰囲気が変わったのは事実。
 刺々しさやぎこちなさが削がれて、いい意味で歯車が合い始めてるのが分かるから。

 何か、俺もきっかけが欲しい。
 そう思わずにはいられない。