昨日の理科室での視線も奥村さんと彼女につるんでいる女子2人組の視線だった。
威圧的というよりは、軽蔑の眼差しのようなものに感じた。
「うちらは公言した覚えはないんだけど、勝手に彼カノ(龍斗と椰子)に認定されてたからね。だけど、今年の春に突如現れた超イケメンの幼なじみが、実は本命で『彼氏』だと聞かされたら、まぁ、龍くんファンはキーッ!ってなるよね」
「やだ、変なこと言わないでよ」
「大事なのは、本人たちの気持ちでしょ」
「……うん」
「椰子と長谷川と……龍くんの」
琴ちゃんは緑茶のペットボトルを開けて、龍斗に視線を向けながら、一口口に含んだ。
琴ちゃんがずっと龍くんを好きなことを知っている私は、いたたまれない気持ちになる。
最近何となく、龍くんの口ぶりとか仕草が、前とは少し違うなぁとは思う。
だからと言って、彼の気持ちが自分に向いているだなんてお門違いな勘違いをしているわけじゃない。
それじゃなくたって、龍くんと親しくしすぎるのは琴ちゃんを傷つけることだって分かってる。
玄希と私、龍くんと琴ちゃん。
紙に書きだすみたいに簡単に組み分けして、今まで通りに仲良く4人で……というのは難しいのかな。



