幼なじみは、私だけに甘い番犬


「分かっただろ。俺はお前じゃ勃たねーんだよ」
「っ……」
「分かったら、どけ」


 いつの間にか椰子の背後に来た玄希が、椰子を抱きすくめる。
 椰子の首筋に顔を埋めながら、ドアノブに手をかけている椰子の手をそっと回収した。
 すると、いつの間にか主張しだした体の一部が、椰子のお尻部分に当たり始める。

「ちょっと、おかしなもんを擦りつけないでよっ」
「あ?しょうがねーだろ。あいつが『椰子より色気があるでしょ?』だの、『エッチしよ』だのほざくから、現実分からせてやんねーと」
「なっ……」
「美咲、悪ぃーな。俺、こいつがいるから生きて帰りたいって本気で思ったし、マジで椰子以外は女に見えねーんだわ」

 玄希の言葉に無意識に体がビクッと反応してしまった。
 強制的に仕立て上げられたはずの『彼女』だから、『彼女として扱われたい』だなんて勘違いもいいところなのに。
 こうして言葉と行動にされると、ちゃんと思われているんだと実感できる。

「美咲、美咲って、煩いよ、この口。縫い付けるよ?」
「う゛?」

 玄希の唇を抓んで、せめてもの抵抗を試みる。
 今まで私以外の女の子は全員苗字呼びだったのに。
 それが一番引っかかっていたから。