幼なじみは、私だけに甘い番犬


 夕食後、拓兄と千穂さんが『ちょっとドライブしてくるから』と、拓兄と玄希の部屋の鍵をこっそり私に渡して来た。
 2人は親の目を盗んでイチャイチャしに行ったのだろうが、いざ鍵を渡されても……。
 でも、朝からモヤモヤしていることもあるから、ちょっとくらい玄希と話すのもいいのかもしれない。
 そう思った私は、自動販売機で買ったお茶を手にして玄希の部屋を訪れた。

 コンコンコンとドアを3回ノックする。
 けれど、中から返事がなくて、『留守なのかな?』と思った、次の瞬間。

『玄くんには、私の方が絶対に合ってるからっ!どうして私じゃダメなの?!』

 部屋の中から張った声が漏れて来た。
 今このコテージにいるメンバーの中で玄希のことを『玄くん』と呼ぶのは1人しかいない。

 私は手にしているカードキーをぎゅっと握りしめて、深呼吸した。
 そして―――、勇気を出してカードキーをドアノブの少し上にあるセンサー部分に翳した。
 ピロリンという音と共に、ガチャッと解除音が響く。
 再び深呼吸してドアノブを捻った。