幼なじみは、私だけに甘い番犬


「椰子ちゃん、どうしたの?」
「え?」
「のぼせちゃった?」
「……ううん、大丈夫」

 露天風呂に浸かっている私が胸を押さえて俯いているからだと思うが、千穂さんが心配して顔を覗き込んで来た。
 あぁ、ここにもいた。
 たわわなお胸の御方が。

「胸を大きくするには、どうしたらいいの?」
「えっ、それ聞く?」
「……ん?」

 千穂さんの豊満なバストを暫くじーっと見つめていた私は、羨望の眼差しを向けながら尋ねてみた。
 すると、ススっと隣りに移動して来た千穂さんが、私の耳元にそっと呟いた。

「彼氏に大きくして貰うのが一番だよ♡」
「ッ?!!」

 それって、拓兄のことじゃん!
 やだっ、変な想像しちゃった。

「あっ、刺激が強かったかな?でも、本当だから。自分でマッサージするより、全然効率がいいよ♡」
「っっっ」
「何の話ですか~?」
「…………ッ?!」

 体と髪を洗い終わった美咲さんが、私と千穂さんがいる露天風呂へとやって来た。
 フェイスタオルで前部分を隠しているのだが、湯船に浸かるために前かがみになった際に、腹部に大きな手術痕があるのが見えた。

「あっ、見えました?」
「……ん」
「玄くんと同じで、3年前に私も肝移植したんですよ。その時の痕です」

 美咲さんは平然と、淡々と説明してくれた。

「同じ痛みを知っている者同士、玄くんとは話が合うんですよね~」
「っ……」

 先制攻撃を喰らった私は、何も言い返すことが出来なかった。