幼なじみは、私だけに甘い番犬


 部屋割りは、玄希の両親、椰子の両親で一部屋ずつ。
 玄希と拓、椰子と千穂で一部屋ずつ割り振られていて、拓兄から『夜はこっそり交換な』と聞かされていたのもあって、玄希と2人でどうやって過ごしたらいいのか?と心配だったけれど……。
 何故か、女子部屋(椰子と千穂)に美咲さんも加わった。

「めっちゃ眺めがええやん」
「ASJの保養所だからね~、大企業の社員施設は格が違うよね。美咲さんは玄希くんとどこで知り合ったの?」
「……大阪の大学病院です」
「あぁ~、なるほどね。治療してた病院で知り合ったのか~」

 キャリーケースを部屋の隅に置いた美咲は、窓から見えるオーシャンビューに大興奮している。
 そんな彼女の話し相手はもっぱら千穂さんがしてくれていて、あれこれと玄希との仲を聞き出してくれている。
 だけど、その話自体を聞くのはちょっと。
 私は千穂さんに声掛けして、部屋を後にした。

 この保養所は10年くらい前に来たことがあって、その時は夏だったから二家族で海水浴した記憶がある。
 さすがにGWで海水浴とはいかないけれど、浜辺を散歩くらいは楽しめそうかな。

「椰子」
「……何?」
「怒ってんの?」
「怒ってないよ」
「あのさ、美咲(・・)のことなんだけど」
「別に、気にしてないからいいよ、いちいち言わなくて」
「あ、でも……」
「家族旅行を台無しにしたくはないから、それだけは気遣って」
「……ん」

 廊下でばったり行き会った玄希を軽くあしらい、私は散歩に出かけることにした。