旅行先の鴨川へと向かう車内。
7人乗りのワンボックスカーに、玄希の両親と椰子の両親、玄希と椰子と……そして、『美咲』という女の子が同乗している。
一番後ろの後部座席に美咲、玄希、椰子の並びで並んでいて、椰子は玄希の足を軽く蹴る。
(何で、彼女がいるのよ?)
(関西から来たのに追い返せないからって、親父が……)
(だからって、何で『家族旅行』に部外者がいるの?)
(知らねーよっ)
玄希が美咲に背を向けるようにして、椰子と読唇術で会話する。
玄希の父親が勤務している最大手航空会社 全日本スカイジェット航空(略ASJ)は、日本各地に保養所があり、社員であれば施設を利用することが出来る。
今回の旅行では、鴨川にある保養所(1棟借り)を予約してあって、1人増えても問題ないからと、美咲も旅行に誘ったのだ。
「玄くーん、夜行バスで来たから、眠うて~。少し寝てええ?」
「……ん」
「ほな、着いたら起こしてな?」
甘ったるい声音で玄希に声をかけた彼女は、玄希の腕に自身の腕を絡ませ、玄希に凭れるように寄り掛かった。
「ちょっ……おぃ、暑苦しいからひっつくな」
玄希が迷惑そうに腕を払おうとしたら、更にしがみついて来た。
しかも、私よりも豊満な、たわわに実った胸を擦りつけるようにして。
本気で嫌なら、デコピンでも目つぶしでもすればいいのに。
結局は彼女の色香に負けてんじゃない!
私のこと、『好き』だとかほざいてた奴が!
もう、知らないんだからっ、勝手にしなさいよ。



