幼なじみは、私だけに甘い番犬

(玄希視点)

 龍斗と雪村とは別々に帰らせて貰い、俺は椰子と2人きりで帰宅した。
 椰子の家の玄関前に到着すると、それまで黙っていた椰子が痺れを切らして口を開く。

「話があったんじゃないの?」
「……ん、ごめん、また今度でいい」
「何それ」
「マジでごめん。ちょっと頭冷やすわ」

 俺は隣りの自宅の玄関の鍵を開け、ドアを開けながら椰子が家に入るのを見届けようと振り返ると。

「お邪魔します!」
「ッ?!」

 俺の腕をすり抜け、椰子が俺の家の中に入ってしまった。

「おいっ、椰子」

 間取りは全く一緒の物件だし、勝手が分かっているというのもあって、スタスタと躊躇うことなく上階にある俺の部屋へと向かってゆく。
 今口聞いたら、椰子の気持ちを問いただしてしまいそうなのに。

 昨日キスをしたからとはいえ、あれは完全に同情と流れ的なものでしたのは分かっている。
 だから、今焦って椰子の気持ちを確かめたところで、欲しい答えが貰えるとは思ってない。

 余裕なさすぎだろ、俺。
 マジでカッコ悪い。