幼なじみは、私だけに甘い番犬


 放課後、HRを終えた玄希は椰子たちがいる隣りのクラスへと。
 椰子の席に雪村と龍斗が集まっていて、書きものをしている椰子を2人が待っているようだ。
 
 教室の後ろのドアから声をかけようとした玄希は、その3人の雰囲気を目にして、数時間前の出来事を思い出す。

 昼間のあれは、龍斗が椰子の髪を触り慣れている感じがしたし、椰子も嫌がる素振りをしていなかった。
 むしろ、龍斗に気をよくしている感じに見えた。

「できた!」
「お疲れ~」

 今日は日直だったのか、椰子は日誌を閉じて背伸びをした、次の瞬間。

「ひげができてる」
「えっ」
「あ、ホントだ!」

 龍斗の指先が椰子の頬に触れ、汚れを落とそうと擦っている。
 その図があまりにも絵になる2人で、思わず足が動いていた。

「悪い、龍斗。それ以上、椰子を触んないで」

 椰子の頬に触れる龍斗の手を鷲掴みし、無理やり引き離した。

 突然の乱入とも思える俺の登場に椰子と雪村は驚き固まっている。
 だが、俺の視線の先にいる龍斗が、一瞬顔を歪めたのを俺は見逃さなかった。