数日後、玄希のクラス(3階の教室)。
2限目と3限目の間の休み時間。
窓際の席の女子2人が、校庭に移動している生徒たちを見下ろしている。
「あの2人、超お似合いだよね~」
「寺田くんが彼氏だなんて、ホント羨ましい」
「わっ、見てあれ」
「いいなぁ~、私も彼氏にあんな風に髪結って貰いたぁ~い」
「あれ静香、彼氏いましたっけ~?」
「ひっどーい!いませんけどぉぉ~?それが何か~?」
窓際で騒ぐ女子の会話を耳にした玄希。
『寺田くんが彼氏』『超お似合い』『髪を結って』というワードに、即座に反応した玄希の体。
飛びつくように窓際に取り付けられている手摺り部分を掴み、乗り出すように窓の外を見る。
そこには、体操着姿の椰子と雪村と龍斗がいた。
靴紐を結び直している雪村の隣りで、椰子の長い髪を手櫛で直しながらシュシュで纏めている龍斗。
椰子からは『好きな人はいない』と聞いているし、龍斗からは『好きな人がいる』と聞いている。
クラスメイトの女子らの会話を聞きながら、脳内で物凄い速さで情報を整理した玄希。
「あのさ、あの2人って付き合ってるの?」
玄希は人差し指で視線の先にいる椰子たちを指差す。
「え、……知らなかったの?あ、転校して来たんだもんね」
「登下校だけじゃなくて、休み時間もいつも一緒にいるし、みんな知ってる名物カップルだよ」
「……」
窓際にいる女子に尋ねると、聞きたくない答えが返って来た。



