幼なじみは、私だけに甘い番犬


「おはよ~~って、えっ、椰子ちゃん、どうしたの?その顔」
「今、あたしも問いただしてたとこ」
「龍斗」
「ん?」
「昨日、椰子に全部話したから」
「……あの話?」
「あぁ」
「そっか。じゃあ、しょうがないよね」
「何、『あの話』って」
「あとで話すよ。ここじゃ話せないし、電車に乗り遅れるから、とりあえず、行こう」

 一足遅れてやって来た龍斗。
 椰子の顔を見て驚いたが、玄希の話に納得し、少し顔を曇らせた。
 玄希は背後に隠している椰子の背中にそっと手を添え、改札口へとエスコートする。

 先に改札口へと歩き出した椰子と玄希。
 そんな二人を見据え、龍斗は琴乃に視線を向けた。

「あの二人には、避けられない大事な出来事だから、ちょっとだけ見守ってやって」
「……何それ」

 琴乃は、自分だけ知らされてない状況がちょっと納得がいかず、ぷくっと頬を膨らませた。
 そんな琴乃に柔らかい笑みを向け、龍斗は『行こ』と声をかける。
 龍斗に密かに想いを寄せている琴乃は、龍斗の優しい気遣いに、怒っていたことすら忘れてしまうほどテンションが急浮上した。