幼なじみは、私だけに甘い番犬


 食べ物や動物のアレルギーがあるのと同じようなものじゃない。
 玄希の場合、それの品目多いというだけで。
 
 定期的な検査を受けながら、病と向き合って生活する人なんてごまんといる。
 玄希だけが特別なんじゃない。
 
 私だって、何かしらの病気を発病するかもしれないし。
 それを『面倒だから』と、突き放す方がどうかしてる。

「生きて、帰って来れてよかった」
「……っっ」

 3年前に引っ越す前夜のあの日。
 玄希が『死』を覚悟してる状態で、私に会いに来てくれたことを今実感した。

 どんな想いで私に触れて、優しく見つめてくれたのかも。

「……んっ……っ……」
「あ~また泣く~~っ、ホント泣き虫だな」
「だ……って……」

 今こうして目の前に戻って来てくれたのは嬉しいけれど。
 あの日、あの時に。
 もっと違う言葉をかけてあげれなかった自分が許せない。
 ううん、違う。
 もっと前、夏休みの時点で、玄希の異変に気付くべきだったのに……。

「……ごっ……めんね」
「それ以上泣いたら、マジでお仕置きすんぞ」
「……ぅっ……」

 そんな簡単にピタッと涙が止まるわけない。
 思い出すだけで溢れて来るのに。

 骨ばった手が私の頬を包む。
 親指の腹で優しく涙が拭われて。
 
 私のおでこに唇を押し当てた玄希は、瞼に、睫毛に、鼻先に、頬に。
 そして、ゆっくりと這い伝った唇が、そっと私の唇と重なった。