幼なじみは、私だけに甘い番犬


 玄希は、当時を思い出すのが辛いのか。
 それとも、私を気遣っての表情なのか。
 言葉を選びながら、ゆっくりとした口調で説明してくれた。

 投薬だけでは症状が改善されなかったこと。
 カテーテルの手術をしたけど、劇的には改善しなかったこと。
 肝移植しなければ、余命1年ももたないと宣告されたことも。

「ごめんな。変な病気になって」

 玄希がなりたくてなったわけじゃないのに、謝らないでよ。
 そんな大変な時に、毎日のようにそばにいたのに、何一つ気付かずにいた自分が恨めしい。

 思い返せば、顔色も少し変だったし。
 動き回れない分、はつらつさもなかったなぁと、今になって気付く。

 叔父さんから肝臓の一部を貰って移植手術を受けた話も。
 拒絶反応や感染症に注意して、生活していたことも。
 制限が多い中で必死に生きようと努力したことを知って、気づかぬうちに涙が溢れていた。

「だから、泣くなって言ったのに……。泣き虫」
「……だって…………ぅっ……」

 こんな大事な話を聞いて、泣かない方がおかしいでしょ。
 いつだって一番そばにいたんだもん。
 拓兄よりも近い存在だったのに。

「もう……体は、平気なの?」
「あぁ。一生免疫抑制剤は飲まないとならないけど、日常生活は支障なく過ごせるようになったよ」
「……そっか」
「ごめんな、今まで黙ってて」