「その前に、約束しろ」
「……何?」
「俺の話を聞いても、絶対に泣くな」
「……分かった」
「ホントに分かってる?……泣いたら、お仕置きだぞ」
「なっ、何それ。……泣かなかったらいいんでしょ?」
「ん。……それと、どんな理由であっても、俺から離れて行くな」
「それは大丈夫だよ!意地悪されたって、文句言われたって離れなかったじゃない、今まで」
「そういう意味の『離れる』じゃねーよ」
「言ってる意味が分かんないよ」
「分かんないなら分かんなくていいよ。とにかく、ずっと俺の傍にいろよな」
「……うん」
いつになく真剣な顔つきの玄希の言葉に、思わず距離を取りたくなってしまう。
そんな私を見透かしてか。
玄希は膝の上に置いてある私の手をぎゅっと掴んだ。
「3年前の夏に、俺が骨折したの、憶えてるか?」
「憶えてる。部活で骨折したんでしょ?」
「それ、嘘だから」
「え?」
「骨折はしてない」
「どういうこと?」
「複雑骨折したってのはカモフラージュで、本当は病気が原因で脚が異常に浮腫んでたんだ」
「……病気って?」
「『バッド・キリア症候群』という難病を発病して、肝臓や静脈とか、とにかくかなり弱ってて。夏だったこともあって、部活でも家でもハーパン(短パン)になる時期だろ」
「……うん」
「だから、ギプスをすることで浮腫んだ脚を隠したかった」
「っ……」



