幼なじみは、私だけに甘い番犬


 静まり返る室内。
 二人とも次の言葉が出て来ない。
 だからこそ、私は勇気を振り絞って行動に移す。

 私に背を向ける玄希の背中にこつんとおでこを預けた。

「私が好きなんじゃないの?」
「っっ……」

 絞り出した声音が、室内に呑まれてゆく。
 玄希の体がビクッと震え、5拍くらいして、大きな溜息を漏らした。

「好きだよ……。好きだからこそ、言えなかったんだよ」
「何で?」
「何でって……。だって、お前……ぜってぇ泣くもん」
「……私が、泣くようなことなの?」
「あぁ」
「……」

 少し長めの黒髪を手で掻き乱しながらゆっくりと振り返った玄希。
 その表情は、凄く困った顔をしていた。

「いつかは話さないとならないのは分かってる。分かってるんだけど……ちょっと踏ん切りがつかなかったんだよ」
「じゃあ、隠し通せるならずっと隠しておこうと思ったの?」
「……いや、いつかは話すつもりだった」
「じゃあ、今でもいいじゃない」
「何だよ、今日はやけに絡んでくるじゃん」
「だって……」
「だって、何だんよ」
「……全部知りたいの。生まれた時からずっと一緒のようなもんなんだから、知らないことがある方がおかしいじゃない」

 生まれる前からの腐れ縁なんだから、今更何があろうが、幼なじみを終わらせようとは思わない。
 一番近い存在だからこそ、何でも知ってて当然だと思ってた。
 だから……。

「今言わなかったら、絶交だからね」
「……分かったよ。言うよ、言えばいいんだろ」

 玄希はとめどない溜息を溢した。