幼なじみは、私だけに甘い番犬

(椰子視点)

 玄希の部屋で待っている間に寝てしまったようで。
 体が僅かに左に傾いて、目が覚めた。

 それは、玄希が帰って来たことを意味していて。
 彼が、私が寝ているベッドに腰掛けたものだった。

 無防備すぎる状態で横たわっている、私の髪や頬をそっと撫でる彼の指先。
 少し冷たくて、かさついていた。

「椰子、……好きだよ」

 初めて聞いた、玄希の気持ち。

『俺の女になるか?』だなんて、冗談か、揶揄いで言ったと思ってたのに。
 本当に私のことが好き……なの?

「……触りたくなるほど、好き……なんだ?」

 これってデジャヴみたい。
 再会した日に、同じようなことがあったよね。
 あの日とは、真逆だけれど。

 ゆっくりと瞼を押し上げると、視界に映った玄希は、見たこともないほどに焦っていた。

「お帰り、どこ行ってたの?」
「……ちょっと」
「ちょっとって、どこ?」

 あからさまに視線が逸らされ、背まで向けられてしまった。
 そんな彼の背中に、私は脳内でシュミレーションしたことを投げつけた。

「私の知らない3年間の出来事を包み隠さず話してよ。じゃないと金輪際、玄希とは一切口聞かないから!」