幼なじみは、私だけに甘い番犬


 分譲マンションにしては珍しいメゾネットタイプの上階に当たる部分に、玄希の部屋がある。
 
 階段を上り、突き当りの部屋のドアノブに手をかけた。

「お邪魔します」

 白とナチュラルブラウンを基調とした玄希の部屋は、無駄なものが置かれていなくて結構すっきりと整頓されている。

 私は部屋の中を隈なく見回してして、何か見落としてるものはないか、チェックする。
 勝手に見るのはダメだと分かっているけど、どうしても疑心暗鬼を振り払えない。

 机の引き出しやベッドの下とか、とにかく隠していそうな場所を隈なくチェックしたけれど、私が欲しい答えは何一つ出て来なかった。

 
 玄希一家が消えた直後は、最初は春休みに家族旅行に出かけて、旅行先で事故に遭ったのかと思った。
 あとは、遠方にいる祖父母が体調を崩し、看病しているとか、お葬式になってしまったとか。

 思いつくことが悪いことばかりで、どんどん心が荒んでいって。
 精神的にも限界だった私は、『幼なじみは最初からいなかった』と何度も心に言い聞かせた。

 それが帰って来るや否や、あんなわけの分からないことを突き付けて来て。
 あの日から、私の日常が再び掻き乱されているというのに。