玄希の両親は夜勤勤務があることもあって、昔から私の家でご飯をしたり、お風呂に入ったりしていた。
だから、お互いの家を行き来できるように、合鍵がお互いの家の玄関に掛けられている。
私はそれを使って、玄希の家の玄関のインターホンを鳴らす。
一応誰かしら在宅しているのか、確認するための最低限のマナーだ。
「お邪魔します」
インターホンからの反応がなかったため、合鍵で玄関ドアを開けて、中に入る。
間取りは一緒だし、家具家電は違えど、見慣れている光景のはずなのに。
3年前の出来事が蘇る。
玄希一家が忽然と消えて、毎日のようにここで帰りを待ち続けた日々。
『涙が枯れるほど』だなんてよく言うけど、あの時の私は無限に泣き続けていた。
毎日、毎日……学校が終わって帰宅したら一目散にこの家に来て、何一つ変わってない部屋の中で、ただただ待ち続けた。
「……ぅっ……っん……」
思い出しただけでも涙が溢れて来る。
「部屋で待ってよ……」



