幼なじみは、私だけに甘い番犬


 教室に戻ると、琴ちゃんと龍くんが待っていてくれた。

「玄希、午後は用事があって、半日で早退したって」
「え?……龍くんとこに連絡来たの?」
「うん」

 聞いてない!
 親友には話すのに、彼女には話さないとかある?
 ってか、私、ホントに彼女なの?

 どこの高校に通ってたとか知らないし、今日だって早退するつもりだったのなら、朝の時点で言えばいいのに!

 モヤモヤする。
 隣りのクラスの女子の会話もそうだけど、何で私には話してくれないんだろう?

「よし、帰るか」
「そだね」

 龍くんと琴ちゃんが、漫画の発売日の話をしているのを上の空で聞きながら、椰子は今日こそ問いただしてやろう!と脳内シュミレーションを繰り返していた。

***

 帰宅し、部屋着に着替えて、リビングへと。
 すでに夕食の準備を始めている母親を凝視していると、椰子の視線に気づいた母親が『どうしたの?』と声をかけてくる。

「お母さんは、玄希一家が関西にいたの、知ってるんでしょ?」
「誰から聞いたの?」
「誰から聞いたのかは、重要じゃない。知ってたのか、知らなかったのか、そっちの方が重要だよ」
「……色々事情があって、知ってても言えることと言えないことがあるのよ」
「何それ」
「そんなに知りたいなら、自分で玄希くんに聞きなさいよ」
「言われなくてもそうするもん!長谷川さん宅(・・・・・・)に行って来ます!」
「彼氏の家に行って来る、でいいじゃない。ホント、素直じゃないんだから」