幼なじみは、私だけに甘い番犬

(玄希視点)

 龍斗の家を後にして、自宅へと向かいながら、俺と椰子の心の温度差を確かめる。

 龍斗と雪村の会話からして、俺らが昨日から付き合い始めたことを知らない様子だった。
 昨日の今日だから、まだ話してなくてもおかしくないが。
 椰子と雪村の関係性を考えたら、黙っている方が不自然すぎる。

 だって椰子は、極度のコミュ障だから。
 人見知りは激しいし、同級生の女子に対しても一定の距離を取ろうとする。

 唯一、心を開いて親しくしているのが、雪村だから。
 そんな雪村に、隠し事をするとは思えない。

 だとすると、昨日の出来事がすっかりリセットされていて、完全にはぐらかす気満々だという結論に至った。

 俺には滅多なことじゃない限り、微笑んだりしないのに。
 龍斗には簡単に笑顔を振りまきやがやって。

 まぁ、元はと言えば、俺が龍斗を椰子に近づけさせたわけだけど。
 3年という時間が、思っていた以上にパンチ力があるようだ。