幼なじみは、私だけに甘い番犬


 対戦ゲームなども楽しんだ私たちは、帰り支度をして、17時過ぎに、龍くんのお家を後にした。

「じゃあ、椰子、また明日ね」
「俺には挨拶ねーのかよ」
「は?あんたが先に言いなさいよ。そしたら、挨拶くらい返してやるわよ」
「じゃあ、いいわ。椰子、帰るぞ」
「あっ……琴ちゃん、また明日ね~」

 龍くん宅の裏口前で琴ちゃんと別れ、玄希と自宅があるマンションへと向かう。
 同じ学区内に家があるため、龍くんの家からそれほど距離があるわけじゃない。
 だから、いつも最寄り駅の改札口前で待ち合わせている。

 夕暮れのひんやりとした空気を肌で感じながら、茜色の空が徐々に薄暗くなってゆく様をぼんやりと見つめながら歩いていると。

「お前、あいつらに俺らが付き合ってること、内緒にしてるだろ」
「……」
「だと、思った」
「付き合うって、本気なの?冗談じゃなくて?」
「冗談にしたいのは椰子だろ」
「……。今まで誰かと付き合うとか考えたこともないし、どういうのが付き合うで、何をしたらいいのかとかも分からないよ」
「俺がいない3年間に好きになったやつとか、出来なかったのかよ」
「……いないよ」
「へぇ~」
「そういう玄希は?」
「秘密」
「は?何それ」

 自己中でわがままなのは知ってたけど、今日の彼を見て『少しは成長したのかな?』だなんて思ってたのに。
 撤回!!
 意地悪なのは、現在進行形だよ!